仙台高等裁判所 昭和27年(う)869号 判決
憲法がすべての国氏は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有し且つ勤労の権利を有し義務を負うことを規定し、また勤労者の団結権、団体交渉その他の団体行動権を保障していることは所論のとおりであるが同時に国民はこれを濫用してはならないのであつて常に公共の福祉のためにこれを利用する責任のあることは同法第十二条の明言しているとおりであるから団結権、団体交渉権、団体行動権と雖も無条件に勤労者の権利として正当化されるものではなく労働関係諸法規の精神並びに社会通念上自ら一定の限界の存することは当然であつて、この権利を逸脱した行為は権利の濫用となり刑罰法規の対象となることは明らかである。本件について、これをみるに穂積、星、橋本等三名は単に福島県の指示に基き新たな失業救済の事業に就労を希望する個々人につき適格審査を行うべき公務を有するに止まり所論のような就労不能の場合の対策の如きは固より権限外の事に属するのに被告人等はその審査を拒否し無審査で全員適格者と認定せしむる為め同人等に原判示のような暴行又は脅迫を加えたものであるから被告人等の所為は労働組合法第一条第二項本文にいう正当な団体交渉ということを得ないのみならず、まさに同項但書にいう暴力の行使に該当するものであると解すべきであり、なお被告人等の所為が刑法にいわゆる正当防衛に該当すると認むべき事由は之を確認しえないのであるから被告人等の所為に対し同法第三十五条や第三十六条を適用することなく同法第九十五条第二項第一項第六十条を適用処断した原判決は洵に相当であつて所論のような法令の適用又は解釈を誤つた違法等はない。論旨はいずれも理由がない。
(後略)